「Webサイトの運営を任されたけれど、何から手をつければいいのか分からない」。制作会社に丸投げしていたころは気にならなかった知識の穴が、自分で更新や集客をやり始めた途端に一気に見えてくる。デザインの話をしているつもりが、いつのまにか検索順位の話になり、気づけば広告の運用に迷い込んでいる。Webの仕事は、境目がない。
ウェブマスター検定は、その境目のない領域をひとつの地図にまとめようとする資格だ。運営は一般社団法人全日本SEO協会。同じ団体がSEO検定も出しているため混同されやすいが、両者はねらいが違う。SEO検定が検索エンジン最適化という一点を深く掘るのに対し、ウェブマスター検定はサイト制作・デザイン・集客・購入への転換までを横断する、Web運営の総合カリキュラムとして組まれている。専門を深めたいのか、それとも全体を見渡せるようになりたいのか。選ぶ基準はそこにある。
級は4つ。4級がウェブの仕組みと基礎知識、3級がサイト制作・デザイン・システム開発の基礎、2級がSNS・SEO・YouTube・オンライン広告といった集客、そして1級が訪問者を購入者に変えるための手法を扱う。番号が小さくなるほど「作る」から「売る」へと関心が移っていく構成で、しかも1級は下位級の範囲までを含んで最も広い。学ぶ側は自分のレベルに合わせて入る級を選べばよく、いま業務のどの局面で詰まっているかが、そのまま受ける級の目安になる。制作で止まっているなら3級、集客で頭を抱えているなら2級、というふうに。
取っておくと何が変わるのか、そして何が変わらないのか
一番の利点は、断片的に拾ってきた知識が一本の線でつながることだ。Web運営を独学でやっていると、SEOはこのブログ、広告はあの動画、と情報源がばらばらになりがちで、全体のどこを触っているのかを見失う。級ごとに範囲が切られたカリキュラムは、その散らばりを整理する棚の役割を果たす。公式テキストが図解を交えて基礎から積み上げる作りになっているのも、範囲の広さに対して迷子になりにくい理由のひとつだ。
もうひとつは、身についたスキルを外から見える形にできること。「Webに詳しい」は自己申告では伝わりにくいが、級という区切りがあれば、どの範囲をどこまで学んだかを相手に示しやすくなる。実際に受けているのはウェブ業界の担当者だけでなく、サイト運営を任された責任者や経営者、これから業界を目指す個人まで幅広い。就職や転職、社内での昇進を意識して受ける人がいるのも、その示しやすさゆえだろう。話の出発点として機能する。
一方で、正直に見ておくべき点もある。これは協会が運営する民間検定であり、国家資格や公的資格のような制度的な後ろ盾があるわけではない。「取れば仕事が来る」類の免許ではなく、実務の成果があって初めて意味を持つ種類の証明だ。「意味があるのか」という問いが検索で根強く出てくるのも、この性質の裏返しだろう。資格そのものより、それを足がかりに何をやるかで価値が決まる。
難易度についても、身構えすぎる必要はなさそうだ。合格基準は全級で得点率80%以上とやや高めに設定されているが、実際の合格率はそれを上回って高い。公表されている2023年度の実績を見ると、4級91%・3級89%・2級87%・1級86%と、いずれも80%台後半で並んでいる。合格ラインの数字だけを見て身構えるより、対策をきちんと積めば手が届きやすい部類、と捉えたほうが実態に近い。ただし上位の級ほど範囲が広くなるぶん、下位級の内容まで含む1級は腰を据えた準備が要る。
受験料と学習にかかる費用
受験料は受け方と級で分かれる。会場試験は税込で1級9,900円、2級7,700円、3級・4級が6,600円。オンライン試験(Excertを使ったIBT方式)はやや上がり、1級11,000円、2級9,900円、3級・4級8,800円となっている。会場での受験は全国12ヶ所で実施されており、そのうち定期的な日程が確認できるのは東京・名古屋・大阪・神戸・福岡だ。オンラインは2・4・6・8・10・12月の偶数月に日曜開催、会場は東京が毎月、大阪・名古屋が3・7・11月、神戸が4・10月、福岡が5・11月と、地方ほど機会が限られる。受けると決めたら、最新の日程は早めに押さえておきたい。
試験は選択式で、確認できている1級・4級はいずれも80問・試験時間60分・得点率80%以上が合格ライン(この数値は各級のページで確認できるもので、2級・3級については級によって異なる可能性がある点を公式で確かめてほしい)。標準的な学習期間は公式には示されていないため、必要な時間の見積もりは公式サイトの各級の出題範囲を見て判断するのが確実だ。
費用の考え方で迷いやすいのが、テキストや問題集を個別に買うか、学習コースをまとめて買うかだ。独学で進めたい人向けに公式テキスト単体の購入も用意されており、たとえば1級で公式テキスト(4,642円)と問題集・模擬試験問題(2,552円)、オンライン受験料(11,000円)を別々にそろえると18,194円になる。ただしこの組み合わせには映像講座が付かない。対してダウンロード学習コースは1級で22,000円だが、図解入りの公式テキスト(PDF)・問題集・模擬試験問題・ビデオ講座・受験料1回分までがひとまとめになっている。差額の数千円で映像講座と受験手続きの一括化を買う、と見ればわかりやすい。学習コースは2級19,800円、3級15,400円、4級13,200円で、いずれも受験料込みのオールインワン型だ(テキスト単体は1級4,642円・2級3,762円・3級4級3,542円、問題集・模擬試験は全級共通2,552円。書籍版を配送で受け取る場合は送料500円が別途かかる)。
こんな人に向いている
Web制作や運営の仕事に就いていて、担当外の領域まで話が通じるようになりたい人には素直に合う。制作の人が集客を、集客の人が制作を、というふうに隣接領域へ知識を広げる足場として使える。自社サイトの集客を自分の手で立て直したい経営者やサイト運営責任者にとっても、全体像を一度整理する機会になる。
これから未経験でWeb業界を目指す人にとっては、4級・3級あたりが入口の地図になる。何を知らないのかすら分からない段階で、学ぶべき範囲を区切ってくれるのはありがたい。逆に、すでにSEOの実務を長くやってきて検索最適化だけをさらに深めたいのであれば、総合型のこの検定より、同協会のSEO検定のほうが目的に近い。網羅か、専門か。そこを見極めてから選ぶといい。
独学で情報を集めるのが苦にならない人は、テキストと問題集だけでも十分に戦える。一方で、動画で流れをつかんでから読み物に入りたい人や、自分のペースで繰り返し学びたい人、受験の手続きまで一度に済ませて学習に集中したい人は、映像講座と受験料が同梱された学習コースのほうが結局は早い。
申し込みと学習をまとめて始めるなら
教材と受験料を一度にそろえたいなら、全日本SEO協会のダウンロード学習コースが手堅い。図解入りの公式テキストと問題集に加えて映像講座が付き、受験料1回分まで含まれるため、教材探しと受験手続きを別々に進める手間がかからない。まずは自分が受ける級と最新の日程をウェブマスター検定の公式ページで確認するところから始めたい。制作で止まっているのか、集客で迷っているのか。詰まっている場所さえはっきりすれば、受ける級はもう決まっている。